できるだけ歯を抜かない治療

40代女性

左下第二大臼歯の痛みで来院されました。

レントゲンで根の先端と、根の分岐部に病変が認められました。

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被せ物と土台を除去し、内部の虫歯を除去すると、根の一部に穴が空いて出血している部分がありました(穿孔、パーフォレーションといいます)。また根に亀裂が入っているようにも見えました。この亀裂に沿って深い歯周ポケットがある場合は、抜歯適応となりますが、今回はポケットはありませんでした。

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残っている歯質が少なく、破折、穿孔も認められる場合、通常抜歯を検討します。

この写真を患者さんにも見ていただき、治療方法の相談をしました。

①抜歯してインプラント

②抜歯してそのままにしておく

③顕微鏡を使用して穴が空いた所を修復して、歯を保存する

(延長ブリッジ、一本だけの入れ歯という選択肢もあるかもしれませんが、当院ではオススメしておりません)

 

今回は、メリットとデメリットを説明した上で、③歯を抜かずに残すことにしました。

メリット:上手くいけば数年間自分の歯を残すことができる、インプラントにするのを先延ばしにできる。

デメリット:長持ちはしない可能性が高い。場合によっては早期に(数ヶ月程度で)痛みや腫れが出て、結局抜歯になる可能性がある。その場合、治療にかけた費用と時間が無駄になる。

 

 

顕微鏡を使用し、古い薬を除去していくと、根の治療に使用する金属の器具が根の中で折れていました。破折した器具自体は悪いものではなく、除去する必要がないこともありますが、今回は根の先端に病変があるため除去が必要です。

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破折したファイルを除去し、根管の消毒を行いました。

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穿孔部はMTAセメントで封鎖しました。

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MTAセメントによる穿孔部の封鎖

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緑の丸の部分がMTAセメントです

次の来院時にセメントの硬化を確認し、根管充填を行いました。

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しばらく仮歯で生活して頂き、痛みがないことを確認し、最終的な被せ物を装着しました。

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治療終了時

元々残っている歯質が少なく、亀裂も入っているため、長持ちはしないかもしれません。ですが、インプラントはできない、やりたくないという場合や、少しでも長く自分の歯を使いたいといった場合には有効だと思います。

 

どの治療法にもメリットとデメリットがあり、どれが一番良いかは患者さんごとに違います。重要なのは、それぞれの治療のメリットとデメリットをきちんと説明し、患者さんに希望する治療を選んで頂くことだと考えています。

 

※顕微鏡を使用した穿孔部の封鎖や、破折器具の除去は保険適用外治療です(4〜8万円)