できるだけ歯を抜かない治療(歯冠長延長術)

40代男性

初診時、左下奥歯の被せ物の下で虫歯が進行していました。

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初診時レントゲン

被せ物を外すと、内部で虫歯がかなり進行しており、残っている歯は歯茎の中に埋もれている状態でした。

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通常、この様な状態では歯を残すことができないので、抜歯を選択します。今回も抜歯を提案致しましたが、患者さんから何とか残したいという希望があり、「歯冠長延長術(クラウンレングス二ング)」という方法を提案させて頂きました。

 

歯茎を切開、剥離して健康な歯質が確保できるまで周囲の骨を削合します。

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縫合します。

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歯茎の治癒を待つ間に根管治療を行いました(3ヶ月程度治癒を待ちます)。

通常、歯冠長延長術の前に根管治療を行いますが、今回は虫歯が深すぎて術前に根管治療を行える状態ではなかったため、術後に行いました。

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根管治療後

 術後約3ヶ月で歯肉の状態は完璧とは言えませんが、何とか被せ物を作製できる状態まできました。

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治療終了時

根の先に病変もあり、経過観察が必要です。

今回のケースでは、抜歯をしてインプラントにするのが理想的かもしれません。しかし、様々な理由でインプラント治療が行えない場合や入れ歯にしたくない場合は、この様にできるだけ自分の歯を残す治療もあります。

 

<注意点>

今回のケースは残存歯質が少なく、長持ちは期待できません。患者さんには目標2年、5年持てばラッキーくらいに考えてくださいと説明し、了承していただいた上で処置を行っています。

早期に(数ヶ月程度で)歯の破折などにより、抜歯となる可能性があります。その場合、治療にかけた費用と期間が無駄になる可能性があります。

※歯冠長延長術は保険適応外治療です(4〜8万円、本数・部位により費用が異なります)。

 

橋本グリーン歯科では、できるだけ自分の歯を長く使える様な治療を心がけています。歯のことでお困りの場合はぜひ一度ご相談ください。

ダイレクトボンディング

20代女性

奥歯の詰め物が古くなったので、きれいにしたいと来院されました。

ダイレクトボンディングという治療法で、出来るだけ天然歯に近づけるように治療を行いました。

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唾液や呼気を排除するために、ラバーダム防湿を行い充填していきます(出来るだけ乾燥した状態で充填した方が、変色や歯との境目の着色が起きにくいです)。

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術前術後の比較

セラミックより歯を削らずに、セラミックと同じくらいきれいに治療することを目指しています。

 

※ダイレクトボンディングは保険適応外治療です。

2〜5万円/本(充填する範囲や、隣接面を含むかどうかで費用が異なります。)

前歯の隙間(正中離開)の治療

20代女性

上の前歯の隙間が気になる

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このような場合、治療の選択肢としては以下のものが考えられます。

①矯正治療で歯並びを改善する

②歯の表面を削って、セラミックの板を貼り付ける(ラミネートベニア)

③歯を一周削ってセラミックの被せ物をいれる

④歯を削らずにプラスチックを充填する(ダイレクトボンディング)

 

今回は矯正は希望されず、できるだけ歯を削りたくないとの希望で、ダイレクトボンディングを行うことになりました。

口腔内写真と歯の模型で充填のシュミレーションを行います。仕上がりを左右対称にすることがポイントです。どちらの歯にどのくらい充填するかを事前に検討します。

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ラバーダム防湿を行い充填していきます。ラバーダムが歯肉を圧排する効果があり、充填後にラバーダムを除去すると歯肉とピッタリ合います(ラバーダム無しで充填すると出血や滲出液が混ざり、精密に充填できません)。

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術中

 

歯を削ることなく、前歯の隙間を埋めることができ、患者さんにも満足していただけました。

歯は一度削ってしまうと二度と元には戻せません。橋本グリーン歯科では、出来るだけ削らない治療をオススメしております。

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術前術後の比較

ダイレクトボンディング:4〜6万円 /本

 

利点:歯を削らない。1回の治療で隙間を埋めることができる(後日、仕上げ研摩に来院して頂く必要があります)

 

欠点:セラミックに比べ将来的に着色、変色しやすい。欠ける可能性がある。

 

神経の保存と、できるだけ削らない治療

20代女性

右上の奥歯に大きな虫歯がありました。

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虫歯除去途中

虫歯を除去したところ、歯の神経が一部露出しました。

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虫歯除去後

消毒を行い、MTAセメントにて神経を保護しました。

その後、プラスチックで充填しました(ダイレクトボンディングといいます)

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MTA、ダイレクトボンディング

術後2年経過しましたが、特に症状もなく神経が生きているかどうかの検査には正常に反応します。

MTAの成分により、若干歯の色が暗くなっているようにも見えます。現在は歯の変色が起こりにくいMTAセメントを使用しています。

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術後2年

今後も神経の状態を定期的にチェックしていく必要があります。

 

※MTAセメントによる神経の保存、ダイレクトボンディングは保険適応外です。

費用:4万〜7万円

 

デメリット:

100%神経が残せるとは限りません。

治療後に痛みが出たり、歯の神経が死んでしまった場合は、神経の治療が必要となります。その際は別途費用がかかります。 

歯の漂白(ウォーキングブリーチ)②

20代女性

左上犬歯の色が気になると来院されました。

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左上犬歯の変色

診査の結果、歯の神経が死んでしまっており、それが原因で歯の変色が起きていることが分かりました。

神経の治療を行い、歯の内部から漂白(ウォーキングブリーチ)を行うことにしました。

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根管充填後

約3週間で右側と同程度まで白くなりました。

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漂白開始後3W

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ウォーキングブリーチ:3万円

※効果には個人差があります。経年的に歯の色が後戻りすることがあります。

 

歯の漂白(ウォーキングブリーチ)

20代女性

右上側切歯の変色が気になるということで来院されました。

他の歯科医院を受診したところ、削ってセラミックの被せ物にしましょうと言われたとのことでした。

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右上側切歯の変色

数年前に神経の治療を行い、最近歯の変色が気になってきたそうです。

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診査の結果、表面の歯質も十分残存しているため被せ物ではなく、歯の内部からの漂白(ウォーキングブリーチといいます)を行うことにしました。

まず、神経の治療をやり直します。

古い詰物を外したところ、本来の根管とは違う方向に削られている部分がありましたが、幸い穴は空いていませんでした。

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白丸:本来の根管  緑丸:間違った方向に削られた部分

本来の根管を先端まで消毒して根管充填を行いました。

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根管充填後、歯の中に漂白の薬を入れて1週間ごとに薬を交換していきます。

約2週間で左の側切歯と同程度まで白くなりました。

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裏側の削った部分をプラスチックで埋めて治療終了です。

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自分の歯を削らずに治療できたことで、患者さんにも満足していただけました。
歯質が薄くなっている部分もあり、将来歯が大きく欠けたりした場合には削って被せ物にしますと説明しています。

基本的に、自分の歯はできるだけ削らないほうが長持ちします。大きく削ってかぶせるのは最終手段に取っておいた方が良いと考えています。

 

ウォーキングブリーチ:3万円

注意点:漂白の効果には個人差があります。効果が十分に得られない場合は削る治療を選択する場合もあります。経年的に、歯の色が後戻りする傾向があります。

 

 

 

 

できるだけ歯を抜かない治療

40代女性

左下第二大臼歯の痛みで来院されました。

レントゲンで根の先端と、根の分岐部に病変が認められました。

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被せ物と土台を除去し、内部の虫歯を除去すると、根の一部に穴が空いて出血している部分がありました(穿孔、パーフォレーションといいます)。また根に亀裂が入っているようにも見えました。この亀裂に沿って深い歯周ポケットがある場合は、抜歯適応となりますが、今回はポケットはありませんでした。

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残っている歯質が少なく、破折、穿孔も認められる場合、通常抜歯を検討します。

この写真を患者さんにも見ていただき、治療方法の相談をしました。

①抜歯してインプラント

②抜歯してそのままにしておく

③顕微鏡を使用して穴が空いた所を修復して、歯を保存する

(延長ブリッジ、一本だけの入れ歯という選択肢もあるかもしれませんが、当院ではオススメしておりません)

 

今回は、メリットとデメリットを説明した上で、③歯を抜かずに残すことにしました。

メリット:上手くいけば数年間自分の歯を残すことができる、インプラントにするのを先延ばしにできる。

デメリット:長持ちはしない可能性が高い。場合によっては早期に(数ヶ月程度で)痛みや腫れが出て、結局抜歯になる可能性がある。その場合、治療にかけた費用と時間が無駄になる。

 

 

顕微鏡を使用し、古い薬を除去していくと、根の治療に使用する金属の器具が根の中で折れていました。破折した器具自体は悪いものではなく、除去する必要がないこともありますが、今回は根の先端に病変があるため除去が必要です。

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破折したファイルを除去し、根管の消毒を行いました。

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穿孔部はMTAセメントで封鎖しました。

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MTAセメントによる穿孔部の封鎖

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緑の丸の部分がMTAセメントです

次の来院時にセメントの硬化を確認し、根管充填を行いました。

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しばらく仮歯で生活して頂き、痛みがないことを確認し、最終的な被せ物を装着しました。

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治療終了時

元々残っている歯質が少なく、亀裂も入っているため、長持ちはしないかもしれません。ですが、インプラントはできない、やりたくないという場合や、少しでも長く自分の歯を使いたいといった場合には有効だと思います。

 

どの治療法にもメリットとデメリットがあり、どれが一番良いかは患者さんごとに違います。重要なのは、それぞれの治療のメリットとデメリットをきちんと説明し、患者さんに希望する治療を選んで頂くことだと考えています。

 

※顕微鏡を使用した穿孔部の封鎖や、破折器具の除去は保険適用外治療です(4〜8万円)